PPRはなぜVolcomを買収したか
Francois Pinault,CEO of PPR and his wife. |
PPRグループ(本社:パリ、フランソワ H.ピノー会長)は5月2日、ヴォルコムを買収すると発表した。PPRはグッチ、ボッテガ・ヴェネタ、イヴ・サンローラン、バレンシアガなどを保有する高級ブランド。いっぽうヴォルコムは業績はまあまあだが、一癖も二癖もあるアクションスポーツのハードコアブランド(だった)である。
アメリカのマスファッションブランドがスケートボードシューズブランドやアウトドアウエアブランドを買うのなら過去に多々例はある。しかしPPRはすでにスポーツシューズのプーマを保有しているとはいえ、グッチグループを保有するれっきとした高級ブランド・メガグループである。VFコーポレーション(本社:ノースカロライナ州グリーンズボロー)やジョンズグループ(本社:ニューヨーク)などとは格が違う。総額5億1,610万ドル(1株24.5ドル)の買物は
メガグループにとって高い買い物ではなかったかもしれないが、一足跳びにアクションスポーツブランドに食指を動かすとは、大方の予想しなかった行動だった。
Volcom Style
Volcom Store |
PPRは2007年にプーマを買収したが、その後は目立った買収行動をとっていない。プーマ買収で手に入れたトレトン(フットウエア)、2010年に買収したコブラゴルフ、ウイルダネスホールディングス(エコツーリスム)、ドボテックス(ソックス)も保有している。しかし、どう見てもこれではPPRのライフスタイルグループにふさわしい陣容とは言えない。
かたやヴォルコムは売上高3億ドルを超えるアクションスポーツウエアの中堅ブランドである。プロダクト部門以外にフィルム&ブック事業部門も保有し、ビデオパッケージも商品として販売している。サーフウェアの評価も高く、プーマの狙いにぴったりのブランドである。昔はトンガってたブランドだが、長い年月が経てばやっぱり普通のブランドになってくる。最近ではプレッピー風のクリーンカットになって、東部のティーンエイジャーが着ていても親がうるさく言わなくなった。
Teen Luxury Brands
Jochan Zeitz, right, chairman of Puma |
PPRの買収目的はプーマを核にしたライフスタイルグループ拡大強化なのは間違いない。問題はどの分野を、どのように拡大するかだ。
プーマはアスレチック、フィットネス、アクティブファッションでは評価が高いが、ナイキやアディダスと同様、アクションスポーツでブランド評価を高めることができなかった。今後のアメリカでは中高校生のファッション市場がいちばん有望と見られているから、彼らに強いアクションスポーツブランドはどのブランものどから手が出るくらい欲しい。PPRとしては、ぜひともプーマがヴォルコムを育成して、アクションスポーツ分野を拡大強化してもらいたかったのである。
日本のアクションスポーツはいまでもサーフィン、スケート、スノーボードのいずれも、ハードコア優位時代が続いている。アメリカではすでに10年前にその時代は終わった。「ビバリーヒルズ青春白書」(1991-99)から「OC」(2003-07)、そして時代は「Gossip Girl」(2007-present)まで進んだ。ネットワークが放映した上掲の3シリーズを見れば、PPRがなぜヴォルコムを欲しがるのか納得できる。
時代は常に、新しいものに背を向けてきた企業を置き去りにしてきた。日本のアクションスポーツ業界は、世界の変化をもっと注視すべき時期に来ている。前門のナイキ、後門のPPR。今、アクションスポーツ市場は消滅の危機に立たされている。
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